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正二位勲一等子爵井上勝君像

我が国鉄道の父。

2007/01/07 公開。

概要

私のように鉄道の歴史をさわりとは言え追いかけていると、決して避けて通ることのできない人物である。我が国の鉄道の黎明期に鉄道頭として新橋横浜間の開業やその後の鉄道の普及に努め、今日の鉄道の発展の基礎を成したいわば『鉄道の父』である。

彼は鉄道とは道路同様国有化することによって、民間企業における利益追求優先による弊害を防ぎ、もって我が国の発展に尽くすべきであるとの考えを貫いた人物でもある。言い方を変えればかつての国鉄、現 JR の社員は足を向けて寝れないはずである。

だが、彼の思いとは裏腹に明治時代の国家は財政に乏しく結局は日本鉄道を皮切りに私鉄が勃興することとなり、彼の再三に渡る国有化大前提の声は届かず、憤慨の末下野している。そして汽車製造株式会社を起こし、蒸気機関車等の車両製造に情熱を注いだのである。同社は最終的には 1972 (昭和 47) 年に川崎重工と合併し、1896 (明治 29) 年からの長い歴史に終止符を打った。

このように生涯を鉄道に捧げた彼の銅像は中央停車場として建設された東京駅前に鎮座しているが、これは 1959 (昭和 34) 年 10 月に再建された二代目である。初代は例によって太平洋戦争による金属回収で撤去されてしまったのである。全くかつての軍部の愚策には枚挙のいとまがない。

ところが、東京駅前に置かれるまではすぐそばの旧国鉄本社にあったが、本社増築のため一時的に外されていたのである。そしてまた現在は東京駅の『復原』工事に伴い姿をくらましている。まことに忙しい銅像である。いつ再び落ち着くのであろうか。

なお、彼の墓は品川駅から少々下った山手線と京浜東北線に挟まれた東海寺の大山墓地内にある。現在はさらに東海道新幹線もすぐ脇をひっきりなし走り、鉄道に生涯を捧げた彼にふさわしい状況となっている。こちらはまだ訪れていないため、機会を作って訪問し追って紹介したい。

調査日:2006/06/11

諸元

項目 内容
正式名称 正二位勲一等子爵井上勝君像
所在地 東京都千代田区丸の内 1 丁目(東京駅丸の内中央口駅舎前丸の内駅前広場)
拝観料 無料
設置年月日 1914 (大正 3) 年 11 月
製作依頼者 未確認
製作者 未確認

調査結果

全景

現在は東京駅復原工事中のため撤去されてしまっているが、我が国の中心たる『中央停車場』というこれ以上無いくらい相応しい場所にこの像は建てられている。また、銅像そのものよりも土台が非常に大きく近づけば近づくほど鑑賞に苦労するほどである。

【正二位勲一等子爵井上勝君像】全景

詳細

正面にある題板は再建前の初代のものがそのまま流用されているとのことである。実は訪問時には上の写真でも分かる通り周囲の除草を実施している業者の方がいたため、撮影がかなりし辛く少々見えにくいものになってしまったが『正二位勲一等子爵井上勝君像』と陽刻されている。

本調査報告書ではこれを本像の正式名称とさせて頂いた。

【正二位勲一等子爵井上勝君像】題板

背面には銘板が埋め込まれているが、これも初代のものである。読み下し文を紹介しておきたい。なお原文は漢文であるが、写真がまともに撮影できなかったため、東京駅復原工事完了後に再訪の上改めて写真を掲載したい。

君は明治初年より創設鉄道の事に専任し拮据経営す、基礎初めて立つ、心を斯業に尽くし老に抵るも渝らず、四十三年夏疾を力めて制を欧州に訪い塗次に歿す、斃れて後己むと謂うべし、茲に同志あい謀り君の像を鋳てこれを東京車站に置き以て偉績を不朽に伝うと、しか云う

【正二位勲一等子爵井上勝君像】銘版

総評

現在東京駅は開業当時の姿に戻す『復原』工事が行われており、本銅像もどこかへ撤去されている。未確認であるが、工事完了若しくは進捗状況に応じて再びこの地に戻ってくると考えられる。

今回紹介した題板や銘板は今は無き初代銅像に付けられていたもののようであるが、『鉄道碑めぐり』にある二代目の銘板は今回の調査時にはあまり近づけなかったこともあり確認できなかったため、是非とも再訪したいと思う。

冒頭に『鉄道に生涯を捧げた』と紹介したが、情報源を失念してしまったが、実は新橋横浜間の我が国初の鉄道の開業に向け自邸の土地も提供したそうである。現代の政治家や政府高官にはこのように志高く、また自らが率先して範を示すような(以下自粛)・・・

ところで、岩手県雫石町にある小岩井農場の名称の由来は、共同創始者である、日本鉄道会社社長の小野氏、三菱社社長の岩崎氏、そして、当時、鉄道庁長官だった井上氏、三名の頭文字から名付けたものである。

参考文献等


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