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古レール JR 東日本山田線【川内駅】

給水塔の残る駅の古レール。

2009/12/28 公開。

概要

JR 東日本山田線川内駅の開業は 1933 (昭和 8) 年 11 月 30 日である。同線の平津戸~陸中川井間の延伸に伴うものであった。つまり開業当初より途中駅である。しかし、同駅は閑散路線であり無人駅の多い盛岡~宮古間の中で数少ない駅員配置駅である。なぜなら全くの途中駅であるにもかかわらず、同駅止まりの列車が存在するからである。

同駅の位置する川井村川内地区は閉伊川が強烈に蛇行しており、川沿いの広い範囲に集落が広がり、また近くには夏屋地区もあるためそこそこの人口規模を誇っていることから同駅止まりの列車が存在するのかも知れない。ただし、Wikipedia によると 2008 年度の同駅の乗車人員は 9 人 / 日(降車客含まず)となっており、この区間運転列車の存在の理由は私には検討がつかない。

ちなみに、盛岡~宮古間の営業キロは 102.1km となっており、このうち盛岡~川内は 61.5km である。およそ半分強といったところである。例えば同駅が峠等のサミットだったりするのであれば分からないでもないが、実際にはずっと盛岡寄りの区界駅がその名の通り峠のサミットであり、そこから宮古までは下り一辺倒なのである。従って地形的な区切りでもない。その区界駅は交換可能駅であるが同駅止まりの列車の設定はない。とにかく私にとってこの川内駅は不思議な位置づけの駅である。

同駅止まりの列車がいつの頃から設定されていたのかは定かではない(もちろん復刻版の時刻表を丹念に追えば判明する)が、開業当初からの可能性も捨て切れない。というのも、同駅は険しい地形を切り開き交換可能駅となっており、さらには SL 時代の名残とも言える給水塔が今なお構内に残されているからである。

当サイトでは山田線の盛岡~宮古間の駅について古レール構造物を取り上げているが、今回取り上げる川内駅の給水塔のように過去を物語る遺構については別の機会に紹介することとし、本報告書では古レールのみを対象とさせて頂く。

そして同駅では、ホーム上屋でも跨線橋でもなく駅名標に古レールが使用されている。

なお、本報告書は以下の総合調査の調査対象である。

調査日:2007/09/28

調査結果

架構

架構という表現は少々大げさかも知れないが、同駅での唯一の古レール構造物である駅名標の全景である。同じ山田線の茂市駅や岩泉線浅内駅のそれとは若干異なっており、最上部の枠が木材ではなく金属である(ただし古レールではない)。

JR 東日本山田線【川内駅】古レール全景

同駅には数カ所に駅名標が存在するが、なぜかこの駅名標だけに古レールが用いられている。この駅名標は駅本屋のある 1 番線の盛岡寄りに位置している。宮古方面を望んでいるが、この写真では少々分かりづらいかも知れないが明るい緑色を目印にして探して頂きたい。

そして、冒頭で紹介した通りホーム 2 面を持つ交換可能駅であることと同時に地形の険しさもお分かり頂けると思う。つまり、地形的にこのような広い場所を確保しやすいためにこの駅を交換可能にしたのではなく、ここを交換可能にする必要があったために敢えてそうしたと私は考えている。

JR 東日本山田線【川内駅】宮古方面全景

盛岡方面を望む。中央にそびえるコンクリート構造物こそ、冒頭で触れた SL 時代の給水塔である。もちろん現在は使用されていないと思われるが、そこへ伸びる引込線や SL へ伸ばすホースまでそのまま残されておリ、現役当時の雰囲気をよく留めているのではないだろうか。

閑散路線とは言え現役の路線であるため、位置的に接近が困難であるのが非常に残念である。前述の岩泉線浅内駅にも同様に給水塔が残されており、こちらも現役路線であることは同じであるがさらなる閑散路線でさらに無人駅であり、また位置的にも接近が容易であるためじっくりと観察が可能である。

再訪の機会があればこの川内駅の給水塔も駅員に交渉し許可が得られれば間近でじっくりと観察してみたい。

JR 東日本山田線【川内駅】盛岡方面全景

刻印

今回は残念ながら刻印は発見できなかった。ただ、比較的断面の大きい(37kg/m 程度か)古レールであることや、推測であるがホームの延伸部分に位置することからこの駅名標は開業当初ではなく後年設置されたものと思われる。

総評

今回取り上げた川内駅は終日駅員配置の交換可能駅にもかかわらず、ホーム上屋も跨線橋も存在しないため一見すると古レール構造物とは無縁に見えるが、駅名標というある意味隠れキャラ的なアイテムに古レールが使われているのである。

私自身も盛岡~宮古間の全駅を訪れているが、川内駅で古レールを発見するとは思いもしなかったというのが事実である。同駅では木造の駅本屋こそ存在するもののホーム上にかかる庇の部分まで全て木造となっているのである。

ただ、細かいことを言うと当サイトで取り上げる古レールはもっと古い時代に製造されたものを主たる対象としているため、その趣旨からすると同駅は範疇外とも言えるが、私自身が実際に目にした範囲では駅名標に古レールが使用されている例は山田線と岩泉線以外にお目にかかったことがないため、敢えて紹介している次第である。恐らくは他の路線でも同様の例は存在すると考えられるが、今後もこのような個人的に希少価値を感じるものは積極的に紹介していきたい。

同線では全区間ではないものの、前面展望動画を撮影している。共同撮影者のサイトにて公開しているのでご覧頂きたい。

参考文献等


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