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古レール 西武鉄道池袋線【中村橋駅】

現代を照らす古レール。

2010/06/03 公開。

概要

現在のように高架化される前には古レールによるホーム上屋及び跨線橋の宝庫と言われていた西武鉄道池袋線の中村橋駅である。同駅は同線初期開業の 9 年後の 1924 (大正 13) 年 6 月 11 日に開業しており、これまた歴史ある駅である。

各駅停車しか停車しない駅であり、沿線住民でない私にとってはなかなか馴染みが無いものの、西武鉄道の各駅停車のみが停車する駅の中では乗降客数が第一位とのことである。

現在は同駅も高架化され、実は古レールを用いた構造物としては存在しない。しかし、同線の東長崎駅と同様に古レールの産業遺構としての価値を認めたのか一部が現代風にアレンジされ第三の人生を送っているのである。

それは、駅舎の北側に沿う道路の街路灯である。つまりは当然改札の外である。往々にして古レールの調査ではホーム上屋や跨線橋を主なターゲットとしているため、改札外でしかもあまり他では例のない利用形態であることや高架駅でもあることから最初は華麗に見落としていた。

だが、Wikipedia や他サイトの情報より存在を知ったのである。従って『その筋』では有名な案件である。

調査日:2009/03/29、2009/10/12

調査結果

架構

全景である。すっかりおしゃれな街路灯となっており、この Y 字型のホーム上屋の架構を見慣れている古レール探訪者以外には全くもって自然な風景であろう。

西武鉄道池袋線【中村橋駅】街路灯古レール全景

個別に見てみると、Y 字の先端部分は街路灯取り付けのため若干カットされ、いわゆる西武型とも言える先折れの Y 字では無くなっているものの、我々から見れば古レールであることが一目瞭然の架構である。

西武鉄道池袋線【中村橋駅】街路灯古レール架構

刻印

今回発見した刻印は以下の通り。現地に解説板があるので私のいい加減な解説など実は無用の長物である。

No 刻印 場所 備考
1 KROLHUTA 1927 M  I 街路灯 ポーランド、クロレウスカ・フータ社、1927 年 1 月製造、ジーメンス・マルチン製鋼法
2 (S) 60 A 1928 IIIIIIII 街路灯 官営八幡製鉄、60LbS / yd、1928 年 8 月製造
3 CARNEGIE 1914 ET I 45 A 街路灯 45LbS / yd、アメリカ カーネギー社 1914 年 1 月製造
4 OH TENNESSEE-6040-ASCE-1-1924 街路灯 平炉製鋼法、アメリカ US スチール・テネシー社、コード番号 6040、アメリカ土木学会規格、1924 年 1 月製造
5 H-W-60LBS-ASCE-XI-1925 街路灯 フランス ウェンデル社、1925 年 11 月製造、60LbS / yd、アメリカ土木学会規格
6 MICHEVILLE I 1926 TB. A.S.C.E 60 lbs. → 街路灯 フランス ミッシュビル社、1926 年 1 月製造、アメリカ土木学会規格、60LbS / yd
7 ← 60LBS .A.S.C.E. → TREB I 26 街路灯 ルクセンブルク テレス・ルージュ社、60LbS / yd、アメリカ土木学会規格、1926 年 1 月製造
8 G.H.H.1926 街路灯 ドイツ グーテ・ホフヌングス製鉄所、1926 年製造

No.2

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

No.3

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

No.4

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

No.5

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

No.6

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

No.7

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

No.8

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

西武鉄道池袋線【中村橋駅】古レール刻印

総評

駅の改良と共に膨大な量がスクラップとなってしまった古レールであるが、断面特性が H 形鋼と似ているため、場所さえ選べば構造部材としてまだまだ利用できるものである。

今回紹介したようなちょっとした工夫による貴重な産業遺構の利活用は称賛に値するものであり、できることなら他の鉄道事業者においても検討して頂けると嬉しい。

また、知らない人が見ればそれが古レールで出来ていることに気がつかない程にきれいにお色直しされているが、それは今後も末永く利用され続けることを意味しており、また製造されてから長い年月を経てもなお沿線住民の暮らしに役立っていることは素晴らしいことだと思う。

昨今のような不景気のご時世ではなかなかこのような『古いモノ』に対して予算が付けにくいと思うが、古レールの歴史はそのまま我が国の鉄そのものの歴史とも言える貴重な生き証人である。少しでも多くの古レールが保存されることを願いたい。

ところで、この中村橋駅では古レールとは関係ないが、かつての地上駅時代の遺構がもう一つ残されている。それは井戸である。これは偶然別件で同駅前を歩いている時に気がついたもので、既に夕暮れどきであったため写真が少々見辛いが紹介したい。

西武鉄道池袋線【中村橋駅】旧駅構内井戸跡

西武鉄道池袋線【中村橋駅】旧駅構内井戸跡

都心の駅でこのような遺構を保存していることも珍しい例であろう。どういう理由で『地域のみなさま』が保存を要望したのかは把握していないが古き良き時代の駅の名残りとして好ましいと思う。

参考文献等


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