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古レール しなの鉄道しなの鉄道線【軽井沢駅】

碓氷峠越えの鉄路と運命を共にした古レール。

2010/01/14 公開。

概要

軽井沢駅と言えば少し前までは誰がどう聞いても国鉄もしくは JR 東日本の駅であった。しかし、その JR 東日本が現時点で便宜上長野新幹線と呼ばれている北陸新幹線の同駅開業に伴って、在来線として所属していた信越本線の横川~軽井沢間(碓氷峠)を廃止したことにより、在来線については第三セクターである『しなの鉄道』の駅となった。

鉄道王国とも言える我が国で幹線であるにもかかわらずこのように分断された例はこの信越本線をおいて他になく、極めて特殊な例である。同駅の開業は 1888 (明治 21) 年 12 月 1 日であり、実に約 130 年の歴史を持っているが、当時中山道沿いの幹線鉄道として計画され生まれた現信越本線がまさか同駅を境にレールが途切れるなど誰が予想し得ただろうか。

このあたりの特殊な経緯は多くの情報が Web でも書籍でも入手可能なので、ここでは詳細は割愛させて頂くが、実は今回取り上げる軽井沢駅の古レールはこの分断された碓氷峠の廃止区間の現地調査に訪れた際に偶然発見したものである。その時撮影した廃止区間の写真のを調査日誌としてのブログにごくごく簡単に紹介しているのでご覧頂きたい。

軽井沢というと首都圏から程近いリゾート地として名高く、また最近ではアウトレット等の設備も充実しているらしく観光地の中の観光地である。従って私のような下賤な野郎はほとんど訪れることのない地域であるが、隣接する碓氷峠は別である。私にとっては道路としても鉄道としてもこの天険を克服する苦闘の歴史を今に伝える重要な場所なのである。

その廃止区間の現地調査のため早朝の東京から新幹線で軽井沢駅に降り立ち、観光地としての軽井沢を華麗にスルーし、国道 18 号旧道沿いに丸一日かける予定で横川へ向かって歩き始めた時にふと線路の方を見た時に発見したのである。

そしてその古レールはまさに調査を開始しようとしていた信越本線の廃止区間が現役だった頃のホームの上屋に残されていた。

調査日:2007/10/06

調査結果

架構

冒頭で述べた通り同駅の古レールは改札を出てから発見したため、この写真はあくまでも廃止区間の調査のために撮影したものであるが、ホーム上屋に古レールが使用されていることが判明したのである。

一番左側のホームがかつて信越本線時代に使用されていたホームのようで、現在は供用停止となっている。またその右隣のホームは現在しなの鉄道が使用しているホームである。そして最も右側のコンクリートフェンスの向こうにあるのが長野新幹線ホームである。

この写真では判断が難しいが、古レールは新幹線ホームを除くニ面の上屋に残されている。

しなの鉄道しなの鉄道線【軽井沢駅】古レール全景

例によって私の撮影技術に問題があるため、少々分かり辛いが改札の外、即ち国道 18 号の旧道からみた廃止ホーム上屋の古レールである。一見現役の様相であるが、冒頭で述べた通り信越本線横川~軽井沢間の廃止に伴って既に供用停止となっている。

奥に見える似たような雰囲気のホームがしなの鉄道のものであるが、ここのも上屋に古レールが使用されている。

しなの鉄道しなの鉄道線【軽井沢駅】古レール全景

供用停止となったホーム上屋の古レール架構を確認する。古レールは柱及び短辺方向の梁にのみ使用され長辺方向はアングル材で連結されている。また、屋根材の骨格は木造であり古レールではない。

ホーム幅が比較的狭いせいか、柱はホーム中央のみに二本の古レール建つタイプであり、そのまま上部で Y 型に分岐し梁の一部となり、山型の古レール梁と接合しているやじろべえ型とも言える架構である。

しなの鉄道しなの鉄道線【軽井沢駅】古レール架構

しなの鉄道として使用されているホームを望む。前述の通りこちらも同様にやじろべえ型の古レール架構のようである。ただし、写真右端の二本の柱に注目して頂きたい。これらは木造の柱である。よく見ると上部の架構が若干異なるのが分かる。ホーム延伸の証拠かも知れない。

しなの鉄道しなの鉄道線【軽井沢駅】古レール全景

刻印

今回は残念ながら刻印を発見することはできなかった。注意して確認したつもりではあるがひょっとすると存在するかも知れない。どなたか情報をお持ちの方はお知らせ頂けると幸いである。

総評

軽井沢駅は冒頭で紹介した通り新幹線の駅を所管する JR 東日本と在来線のしなの鉄道という二社が共存する駅であるが、古レールはしなの鉄道としての駅構内に存在している。今回は廃止ホームについては秘術を用いた結果調査を行うことができたが、本来の目的である碓氷峠の信越本線の廃止区間の調査に時間を少しでも割くため、しなの鉄道ホームの調査を行うことが叶わなかった。

その廃止区間の調査は一日ではとても見切れるものではなく、再訪するつもりであるが予定は未定である。再訪の際にはしなの鉄道ホームの古レール調査も盛り込むようにしたい。調査結果については本報告書への追記という形式になると思われるが気長にお待ち頂きたい。

一枚目の写真の通りどういう訳かホームの端部にちょこっとだけ上屋があるが、すぐには撤去されないという期待をしている。もし撤去工事等が始まってしまったらコメント等で情報を頂けると幸いである。何とかして速攻で現地調査を敢行したい。

参考文献等


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